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宝塚のダブスタとファンの潔癖性

宝塚歌劇団の公式HPにて、ファンアート(作品やスターを描いたイラスト等)のSNS掲載が禁止と表明された。プロアマ問わずイラストを上げていたファンは多く、驚きと悲しみで炎上状態である。
またグッズの写真等の掲載も、ついでのように「お断り」とされており、宝塚がどれ程時代とあっていないかが表れた。

 

とはいえ、どうみても「SNSに上げること」を前提としたグッズも多く販売されている。コロナでの客離れ対策で出した、写真を載せたピクチャーチケットもいかにもSNS用だ。
OGも常にポスターは背景というわけではない。「演者を主体とした(ポスター単体等)写真」は上げている。
劇場周辺の商業施設や近くのイベント等も、タカラジェンヌ主体の写真をSNSに上げている場合は多い。
全体的に、穴が多い内容である。

 

また著作権についてのカテゴリで「文化祭」は、(1)営利を目的としない、(2)聴衆または観衆から料金を受けない、(3)その出演者が報酬を受けない(1)~(3)全て満たす)場合は可能、という矛盾も出てしまっている。

 

そうなると、OG含めた芸能人や商業施設の方が営利目的の要素があるため、法には違反している。(アフェリエイトのブログを除く)一般的なSNS利用者が、やりにくくなるのはおかしい。

また「芸名、台詞・歌詞」の著作権も明記されている。それなら題名も含まれ、省略やあだ名も改変となるであろう。

載せて良いものなど一切無いのだ。

極論、「ファンもSNS禁止令」と言ってもいい。

 

ただ現実問題として、「黙認していても許可は出せない」のは分かっていた。
良いかと聞かれれば、お断りするしかない。

良いと答えてしまえば勝手な書き換えや、本筋と異なるアレンジ等、全てを許すことになる。
またSNSでは誹謗中傷としてより、著作権や肖像権侵害の方がスムーズに削除出来る。

 

つまり「問題の主体は著作権ではないけど、著作権を理由に削除出来る状況」は整えておく必要がある。
今のところ、SNS上でファンアートや「演者を主体とした写真」の一斉削除が行われたという情報は無い。

 

つまり、黙認は続行かと思われる。
かつて入出のギャラリーでも似たようなことがあった。あれも基本は黙認で、問題のある投稿や都合が悪くなると、肖像権を理由に削除していたように見えた。

実際問題、著作権や肖像権を一切侵害しない絵や写真など、ほぼ不可能である。

大切なことは最初から侵害しないことではなく、権利者から削除要請があれば即座に対応することであろう。

 

この炎上の根本には、宝塚ファンが「正義中毒」や、「いい子症候群」のような潔癖性を持っていることがある。

自分は清く正しいファンであり、その確証を劇団から与えて欲しい。
またどうしたら宝塚が思う「いい子ファン」になり、そうでないファンや関係者を「正義」として叩けるのか。
……そのための完璧な教科書を欲しがり、優等生か風紀委員になりたがっている。

 

しかし、大半はいい大人であろう。
本音と建前を割り切り、清濁併せ呑む覚悟くらいは持っても良いように思う。

そうしないと、いつか宝塚歌劇団そのものが許せなくなる。危険な傾向である。

星組公演の低迷から考える売上の要素

星組 全国ツアー公演『バレンシアの熱い花』『パッション・ダムール・アゲイン!』が、近年ワーストと思われる余りぶりを出している。

コロナ自粛も落ち着き、むしろその反動か瞬殺が当たり前になってしばらく立つ。しかし今回は公演数が少ないにも関わらず、発売から大分経った現在も土日、大千秋楽までがS席A席共に残っている。


ラストの福岡に至っては、完売日が無い非常事態である。

日程から考えると、コロナ前を含めた近年でもワーストかもしれない。

 

すぐに売れたのは本拠地大劇場から近く宝塚歌劇団の首都圏である関東関西、2番手役瀬央ゆりあの出身地である広島公演のみであった。

 

特に地方のチケットは、宝塚が公式に認めているチケトレでは取り扱い外である。なんとか余らせたチケットを捌こうと、非公式でかなり値下げした投稿も数多く出ている。

なお公式HPではそのような大幅値下げ、叩き売り状態も含めた非公式転売さえ「警察沙汰も辞さない」と辛辣なコメントを出していた。こちらも異常事態である。

 

公式非公式総合すると、大量にチケットを余らせている。近年では完売が当たり前で、むしろ完売までの時間を競う宝塚にとっては、既に大失敗という結果が出た。

 

そしてこの売上低迷は、宝塚のチケット捌きが「恥の文化」頼りということを証明している。
つまり純粋に観たいかよりも「贔屓の顔を潰したくない」、「体面を保たせたい」というのが購買理由の大部分を占めているのである。

 

なぜなら今回は出演者の全員が責任逃れ可能で、「誰かのせいに出来る」立ち位置なのだ。

 

凪七瑠海……主演であるが専科のため、星組を背負ってはいない。売れないのは組(子)のせいで済む。
また全ツ主演級でワーストでも専科での集客力はトップクラスなのは明らかなため、立場が危うくなるような状況でもない。

 

瀬央ゆりあ……2番手役のため、出演するかさえなかなか分からなかった。それでも出身地である広島公演が即完売したという、充分な結果を出している。
他の出演者は更に、ギリギリまで分からなかった。

 

舞空瞳……立場やキャリアにしては、低すぎる集客力だ。しかし、宝塚が娘役の集客力を当てにしているかは疑問である。

また裏ではこれまで相手役であった礼真琴が、史上最大レベルのチケット難を起こしている。

今までの売上がコンビではなく、トップスター1人で賄われていたのを、一般にも明示しただけであろう。
トップスター会より安く、チケットが取れやすそうという理由で私設FCに入った「偽装会員」を炙り出した可能性もある。

 

つまり売上低迷の責任は、かなり判断が難しい。
むしろ普段から純粋な売上など極一部で、恥の文化というファン心理が無ければ、あっさりと売れなくなることを証明されたように思う。

コロナ初期は同情的に見られていた演劇界だが、最近ではアップデートを疎かにしている点が目立っている。

歪な販売手段にも、見切りをつける時が来たのではないだろうか。

宝塚歌劇団と戦争の商業利用~なぜひまわりでなくディミトリなのか~

なお何故ウクライナではなくジョージアなのかという話であって、『ひまわり』をやって欲しい訳ではない。
 
星組公演『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』について、生田大和先生は「ジョージア舞踏をさせるために原作を探した」らしい。
しかし時期的に逆算し他の演出家の話と照らし合わせても、「ジョージア」に焦点を当てるきっかけになった要因は、ロシアのウクライナ侵攻なのが明らかである。
 
実際、当初日本国内では有力な情報の当てが少ないため、ジョージアや駐日大使への注目が集まっていた。ジョージア舞踏の指導を担当した方が宝塚のオファーを信じられなかったというのも納得なほど、何の脈絡もなく目につくところではない。まして大劇場作品で、無名といっていい原作を「舞台によって」売り出すのは、明らかに時世からの注目を当てにしている。
 
SNSに熱心なジョージア駐日大使が、宝塚を利用し自国をアピールするのは当然である。
ただ、聖地巡礼等といって旅行をアピールするのは問題ではないのか。場所や情勢を考えて欲しい。
筆者自身、周囲に心配される状態だった国に渡航した経験もあるため、いけば日常の光景が並んでいることは分かる。
しかし、普通なら今行こうとはしない。大切な家族や友人であれば、数年は止めた方が良いと言うであろう。
また万が一何かに巻き込まれたら、世間は宝塚歌劇団星組トップスター礼真琴に責任を求める。
 
新型コロナウィルスの感染拡大以降、責任を押し付けられやすくなってしまった演劇界である。
もう少し気を張って、配慮するべきだ。
 
これは宝塚の「社会派ではなくエンターテイメント」というポリシーのせいもあるかと思われる。
しかし社会派要素を匂わせつつ、危うくなったら浅いエンタメとして済むラインというのは、最も危険な悪手ではないのか。
 
大っぴらに「ウクライナを支援する」であれば、リスク0ではないにせよ批判はされにくい。攻撃の的になることがあっても、応援も付きやすいであろう。
その代表が映画『ひまわり』である。上映、放送、円盤の売れ行き等は、支援の一環としても大きなブームとなった。
 
また去年末に来日したウクライナ国立バレエは、覚悟の会見を開き、ウクライナ文化省の要請を受けロシア人作曲家による作品は控えた
それでも情勢により来日が叶わず、キャストが変更される事態にもなっていた。
 
宝塚がこれほどの覚悟を持てるはずも、持つ必要も無いのかもしれない。しかし逃げた結果、ウクライナ支援への大義も覚悟も、それに伴う社会的な応援も得ないまま「ロシアの軍事侵攻非難に片足突っ込む」だけを軽々しく行ってしまっている。
戦争を商業利用すること自体への賛否も、もちろんある。しかしそれ以前に「明らかに利用しながらも責任からは逃れたい」というのは、あまりに醜悪なやり方である。
 
ベルサイユのばらを観てフランスに行く感覚で、ジョージアや周辺国、纏わる場所に行ってしまうファンが出るかもしれない。
そこで何らかの事態に巻き込まれても、自己責任とは言い切れない。
誰もがSNSで発信するのが当たり前の時代、もし宝塚がきっかけだと明確になれば、メディアや世論は当然責任を求めるであろう。
何も考えなくていい程のエンタメ性を売りにしている以上、宝塚歌劇団側が影響力を自覚し、考えて配慮すべき問題だ。

真彩希帆のインスタ炎上について

今回の炎上、ジャニーズアイドルと共演(夫婦役)→ストーリーを「匂わせ」としてジャニーズファンが文句のDM→DMをスクショして「悲しい」という理由でストーリーに載せる。後に削除。
細かい箇所は違うかもしれないが、こう認識している。

基本的に「頭のおかしいファン」を糾弾する宝塚ファンとジャニーズファンが目立った。また批判的な意見も、ファンの擁護の仕方がおかしいという点がほとんどだったように思う。

しかし今回、最も問題なのは晒した行動である。
正直、やり返したく気持ちは分かる。擁護したくなる気持ちも分かる。しかし、DMという閉じられた場所でクレームをつけることと、それを公に晒すのでは確実に後者の方が重罪である。

コンビニ等一般的な店舗で、クレーム客を身元が分かりかねない状態でネットに流せば、店舗としての信用は失う。そんな店には誰も行かない所か、取引先としても付き合いは難しい。
特に今回は、誰のファンからのDMなのかが明らかであり、共演者への悪口をネットに流したも同然である。

「こういう意見が来たことがあり、悲しかった」という文を載せるのは良い。しかし公演を行っていない期間にする等、誰のファンか分からないようにする配慮は必要である。
さらに今回は相手のアカウントが分かりかねない状態の画像を載せる、晒して相手を自分のファンに攻撃させようという意図が見えてしまっている。

誰でも見れるコメントに書いてある内容ならまだ良いが、相手も大っぴらには言いたくないからこそのDMであろう。
それを卑怯だと糾弾するだけならいい。強制的に表に出し、自分の味方ばかりが見ている場所に晒すというのは更に卑怯と言える。
卑怯な相手だから自分も何をしても良い、という傲慢さは問題である。

昨今有名人への誹謗中傷が問題視されているが、その解決策は訴えや注意喚起だ。
「やり返して、勝つ」というのは、殴られたから殴り返したということである。
この場合は自分の方が、圧倒的に発言力が強いと分かった上での行動である。
「小さい子どもに叩かれて、健康な成人男性が全力で殴り返した」ぐらいの力の差がある。

ましてや、ただのファン同士の小競り合いではない。宝塚も今の出演作品も、これからの出演作品も背負っている。責任の重さがまるで違うのに同じようにやり返すのは、「プロ意識ない」というDMの内容が、図星だったことを証明してしまった。

他の宝塚OGも相手役含め、多くのジャニーズとの共演予定がある。ましてや似たようなファンが多いであろう2.5次元俳優も含めれば、共演は避けられない。
今回の件はジャニーズよりも、宝塚OG全体の起用の方に影響を与えかねないと感じる。

娘役であろうと元トップである以上、元トップスターと同じ程度にOGとしての責任が伴う。
元トップでなければ許される新規開拓や冒険も、元トップの看板を背負う以上は越えてはいけない範疇がある。異質なことをしなくてもやっていけるだろうぐらいに、劇団が売り出してくれたのだから。

仕事も対応も取捨選択の「取」ばかり目立つが、宝塚という看板に多くのものを用意して貰っている以上は「捨」が大切になる。
「やるべきでないことをやらない」のを最優先にすべきである。

めぐり会いは再び 第3弾の皇室風刺

星組公演『めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人(ミッドナイト・ガールフレンド)-』は、『めぐり会いは再び』の第3弾である。毎回見事な当て書きが話題で、宝塚オリジナルの芝居では唯一と言っていいであろう、人気シリーズとなっている。

ただ今回、2ndでは礼真琴が演じたルーチェはかなり下級生時代、相手役の舞空瞳演じるアンジェリークは名前のみで先行イメージが着いていて、無理矢理こじつけた面はある。
そのためなのか、ルーチェは「弁護士としてバリバリ働いているという見栄を張る助手」、しかし実は「王女である彼女と結婚する」という、あからさまに秋篠宮ご夫妻の長女眞子さんの夫である、小室圭さんを元ネタにした内容となっている。

出会いは2ndでの縛りがあるため少年時代だが、補填するように「大学時代の同級生達とモラトリアムを謳歌」している。
もちろんどんな作品も全く0から生まれることは無く、基本的にはオマージュ等元ネタがある。そもそも他にも時事ネタ内輪ネタがてんこ盛りの内容だ。
その中で「結婚相手が王になる」オチは、昨今の女系天皇の話題からするとかなりセンシティブな内容ではある。ただし王として特に何かするわけでもなく旅に出るので、軽いコメディとして割り切って見れた。

同じく小柳奈穂子脚本・演出の雪組公演『ルパン三世 —王妃の首飾りを追え!—』では、マリー・アントワネットを風刺した劇中劇を本人が観る場面があった。今回はそれを現実に行ったのだ。
実際に小室夫妻が観劇することは無かったはずではあるが、もし見ていたら何が伝わったであろう。

退団公演であった天寿光希演じるユリウスと音波みのり演じるレオニードが、それぞれトップに言葉をかける場面は、宝塚特有の内輪ネタシーンであった。
それと同時に演劇会の皇室的ポジションを確立する宝塚作家から、日本のプリンセスとその夫へ送るエールだったのかもしれない。