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102期を透明化する遺族と誰も責めたくない宝塚

宝塚歌劇団の25歳劇団員女性が9月に急死した問題を受け、11月14日に歌劇団が会見を行った。

その週の週刊文春には、転落死した宙組103期生が母親に送っていたLINEが掲載された。

 

しかしこれは宙組が文春のターゲットにされるきっかけとなった記事が、母親が流した情報によるものだと言っているようなものである。

そもそも文春に掲載されても損しかない故人が、文春にリークしたとは思えない。それなのに宙組生から疑われるというのは、非現実的だった。

 

しかし「母親へ愚痴を漏らしていた」なら、隠しておけないだろう。普段から悪口を言っていたのが分かる文面なので、不仲は周知の事実。それなら宙組生との関係性は最悪になり、家族への不信感も募る。

組内でも家庭内でも安心出来る居場所が無かったように思えた。

 

死を選んだ原因に、母親に愚痴を漏らし、大事になってしまったことへの自責の念の可能性が追加された。何より家族との関係性にも悩んでしまったのではないか。

宝塚は退団してしまえば終わりだが、血の繋がった家族との終わりには死しか見えなくなる。

 

今回に限ったことではなく、自殺の原因は複合的な要因と思うべきだ。家族のように関係性が近ければ近いほど、要因になる可能性は高い。

近年では芸能人の自死が急増した麻痺なのか、遺族も事故死か病死のように語るようになった。正直、遺族に死の原因が一切ない前提に驚く。

事故なら確かにより悪い方のせいだが、自死はより傷付く相手が原因と思った方がいいのではないか。

 

双子の妹は102期の雪組男役だ。特に雪組は、宙組から現トップ娘役が移動してきた時期から売上が低迷している。コロナがあったので個人の責任にするのは酷だが、チケット捌きの責任が重い男役からすれば痛手である。母親自身、宙組に対して嫌な感情を抱いていた可能性は高い。

双子で予科本科という密な上下関係に、男役と娘役の格差もあっただろう。掲載されたLINEで日頃から愚痴を吐いていたことが伺えるが、母親に構って欲しい気持ちも読める。単に聞いて欲しいだけで、こんなことして欲しいわけではなかった。しかし積み重なった宙組上級生への悪口によって、母親の目を曇らせてしまった印象がある。

 

また音楽学校時代、102期の103期へのパワハラについては加害者も被害者も娘である。音楽学校でのパワハラをする側される側、同時期の両方の視点から聞いているはずだ。

しかし102期の加害については一切出さず、被害者としての個人的な内容ばかり言及している。根本的な問題を正そうとはしていないのだ。

 

以上を踏まえ、遺族が会見で読まれた文面を書いたかと思うと、恐怖を覚える。

宙組生を散々糾弾するわりに、102期の妹含め加害者でもある点には一切触れない。

遠巻きに見ていただけでも、死の原因に家族がある可能性は高いと感じる。それなのに、102期の妹は除外して特定の宙組生が原因という「結論ありきの捜査」を求めている。

これでは遺族側も、都合の悪いことの隠蔽体質そのものだ。

 

ヘアアイロンの件を傷害事件とするには、確かに証拠不十分だろう。

民事なら自由に裁判を起こせるが、そこはお互い様だ。103期が102期を訴えたり、宙組生が母親を訴えることも当然出来る。

火傷が故意なのかは証明出来なくても、悪口のLINEを流した証拠は自分から出したようなものなのだ。

 

こんなにもヘアアイロンの話題ばかりなのは、他が加害というには微妙だからかと思う。

ジャニーズの件がこんなに動いたのは、パワハラではない。未成年への性加害だ。

宝塚にざっくり置き換えると「理事長が音楽学校で未成年の生徒に強制性交」レベルである。

 

弁護士の成功実績らしい電通でも、セクハラが大きかったと記憶している。

宝塚歌劇団では、パワハラは指導の一環としてどう考えていくべきかの過渡期としていた。一方でセクハラは許さないと公言しており、演出家は即退団出禁となった。

今のところ、タカラジェンヌにセクハラ加害者としての文春砲は無い。

 

言動でパワハラとなると、差別的な発言である。要はコンプライアンス問題だ。

顔や体といった身体的な特徴を怒鳴れば、指導の域を越えている。実際に退団となった演出家も、顔の大きさや斜視について怒鳴ったとあり、ファンからも差別的過ぎると批判された。

しかし今回の宙組は、口調が優しければ問題ないだろう程度の内容であった。

 

もちろん過重労働は問題であり、そこは改善すると明言された。一方でコロナのような緊急事態では、他の舞台役者と比べ遥かに良い待遇であったのも事実である。

宝塚OGは、意外とSNSのやらかしが多い。一般人のそこまでキツくもないコメントに対しても、怒る、傷付く等過剰な反応をしたり、制裁的に晒したOGもいた。

閉じられた世界で厳しい面もあるが、守られている面も明らかにある。

 

タカラジェンヌは箱入りお嬢様のイメージが強いが、理事などの運営側やスタッフ団員、その家族も大半が箱入りである。お坊っちゃんお嬢ちゃん集団なのだ。百戦錬磨の週刊文春相手に、ろくに戦えるとは思っていなかった。

 

しかし手っ取り早く遺族の主張の穴をつくことも、言われるがままに宙組生を差し出すこともしない。

これが宝塚の仁義なのかもしれない。