極美慎の花組生として最初かつ東上初主演の『DEAN』は、 星組スターとして集大成のような公演であった。
新人公演で主演をした『ベルリン、わが愛』と立場は違いながらも、 映画人としてカメラに向き合う姿は共通している。 星空や車の臨場感といったその世界を体感させる演出は、宝塚に確かに残されていた。
『霧深きエルベのほとり』のように世慣れ女慣れしながら、不器用さを併せ持った人物像がしっくりくる。異質で浮いた存在として、馴染めきれないまま終わる孤独さ。
その感情を爆発させる、魂の芝居は心を動かすものがあった。
『BIG FISH(ビッグ・フィッシュ)』のようなラストながら生え抜きトップスターとして円熟の礼真琴と、 組替えしたて極美慎の対極さがまざまざと表現された。
原版はもちろん史実があるので大胆に改変とはいかない上に、花組生や花組ファンに星組で築いたイメージを定着させたいからこその演目ともいえる。
ただ宝塚の筆頭組であり、伝統とプライドの花組。
『ポーの一族』の出演がはっきりしない瀬央ゆりあに続き、花組へ組替えした極美慎も「星組出身者の芹香斗亜的扱い」が危ぶまれている。
ジェームズ・ディーンのように「道半ば」で花組を去ることを示唆しているようにも感じた。
組も年功序列の傾向があり、花組から他組へ行くのは降格。下の組配属者より優遇されて当たり前といった風潮がある。
そのせいか星組出身者の扱いは悪い。 星組配属の有望娘役は組替え先での冷遇が目立ち、当の星組はスポンサー重視。宙組配属者のように末っ子的な配慮もされない。
星組配属者が丁重に扱われるには宙組しかなかったからこそ、真風涼帆、芹香斗亜、天彩峰里が集中しバッシングに繋がったといえる。
また花組は最も「お堅い組」として、星組とまた違った厳しい組というのがプライドだった。
しかし宙組のパワハラ問題で宝塚歌劇団の厳しい上下関係はもちろん、男役と娘役の不均衡、男尊女卑な感覚にも批判が集まってきた。
それもあってかゴリ押しされてきた永久輝せあながら人気は低迷、宙組がなければワーストの危機にもある。
だからこそ起爆剤になることを求められているはずの極美慎だが、同期~予科本科のトップ娘役時代が無いままだ。
最大限に近い学年の海乃美月で用意された鳳月杏や、組替え前など間が空いた場合を含め近年
同期~予科本科のトップ娘役時代が無いまま、トップスターに就任はほぼない。
無理になったとしても、人気が出る可能性はさらに低い。
現花組トップ娘役の星空美咲は105期。これは極美慎を花組トップスターにする気がない表明といえる。
ただイメージキャラクターに就けた、加美乃素の目もあるだろう。大劇場公演の貸切キャンペーンのために、不人気組からの早急な脱却が求められてもいる。
何より「いらなくなったら他組へ押し付け、他組配属者より優遇させる」組同士のパワハラが、 巡り巡って宙組の事件を引き起こし110周年も潰したのだ。
宝塚歌劇団全体に先駆け、花組のお山の大将的な自意識も改革すべきタイミングかもしれない。