有沙瞳と読み違える『阿修羅城の瞳』の宝塚化が発表され、小柳奈穂子までが礼真琴×有沙瞳の構想を練っていたと知らしめた。
弁護士になるつもりがニート状態でモラトリアム期間を過ごし王女と結婚する「小室圭さん眞子さん」を描き、皇室を風刺した『めぐり会いは再び next generation-真夜中の依頼人-』は既にやっている。
コロナ真っ只中で中止が多く、第1~2弾の円盤で売上を補填するためだったのだろう。
とはいえ、急ごしらえではあった。
小池修一郎の次くらいには原作に強い小柳奈穂子が時事ネタ、つまり礼真琴作品の構想が無いとは意外だったが
単に「有沙瞳が相手役で考えていた」ということか。
『阿修羅城の瞳』は運良くやもめ状態で出来るので、潤色の得意な小柳奈穂子の本領発揮となる。
結局礼真琴×有沙瞳作品を実現出来たのは、谷貴矢『Le Rouge et le Noir~赤と黒~』であった。『RRR×TAKA"R"AZUKA〜√Bheem〜』を抱え梅田芸術劇場シアター・ドラマシティに対応する、若手の自由さと柔軟さが功を奏した印象である。
一方で、無理矢理そのままやった作品も多い。
公演中の『記憶にございません!』-トップ・シークレット-も礼真琴×有沙瞳想定感がある。
しかも原作を考えればやもめ体制にぴったりなテーマと群像劇。三谷幸喜新作映画「スオミの話をしよう」の公開がなければ、やる時期は違ったかもしれない。
石田昌也としては『ロックオペラ モーツァルト』の焼き直しな面はあるだろう。とはいえコンスタンツェも『ドン・ジュアン』のエルヴィラが報われる姿のようである。
世の中的に「いかにも有沙瞳」の役だ。
最も礼真琴×有沙瞳的だったのは『阿弖流為 -ATERUI-』の大野拓史がやった『柳生忍法帖』。
有沙瞳がトップ娘役前提で作りすぎて、何をやらせるか明らかに困っていた。
それでも文化庁芸術祭賞に導き、今に繋げた大野拓史。カレンダー通り退団公演だとして、2本立てなのに外されたのは意外だ。
レビュー『エスペラント!』も2025大阪・関西万博を意識している感があるため、退団公演にしては商業的過ぎる気もする。
そもそも礼真琴も出演があるだろう舞空瞳サヨナラショー、退団記者会見、タカラヅカ・スカイ・ステージの公開収録トーク&ライブ……星組宝塚大劇場公演にこんなにも負担が追加されてるとしたら、過重労働の見直しとはなんだったのだろう。
礼真琴×有沙瞳でこんなに構想が出ているのは、演出家とスターにちゃんと人間関係があるからだ。
人としての繋がりこそが、宝塚歌劇団であって欲しいものである。