有沙瞳も大劇場ヒロイン格をやる予定だったと、星組トップ娘役を設けない「礼真琴やもめ期」で表面された。
今の池田泉州銀行イメージガールは既に宙組トップ娘役の春乃さくらなので、池銀特権が行使されることはしばらくない。
むしろ有沙瞳が約2年後の大劇場ヒロイン格を待たず退団したことで、スポンサー側も特権の在り方を考え直すかもしれない。
また芹香斗亜のプレ退団かつ桜木みなとの今後を占う宙組公演全国ツアー『大海賊』『Heat on Beat! -Evolution-』の売れ行きがなかなか厳しい。
それがまた礼真琴宙組スライドの必要性を知らしめている。『Tiara Azul -Destino-』は舞空瞳だけでなく、礼真琴も星組を離れそうな雰囲気だ。
とはいえ、礼真琴×有沙瞳の想定で企画された作品はあっただろう。星組に限らずイワタニ(暁千星)とヒガシマル(詩ちづる)がいると、名の知れた原作が用意される。
じゃあどんなのが礼真琴×有沙瞳だったかというと、それこそが『記憶にございません!』に思えてきた。
まず日本。ヒロイン格である有沙瞳は着物だ。
やはり礼真琴×有沙瞳といえば『阿弖流為 –ATERUI–』、そして有沙瞳は日本物の雪組出身である。
ことみほの恋愛描写はないものの、コンビ性が発揮された『ANOTHER WORLD』では、日本物にしてはポップな着物であった。
「記憶にございません!」原作ポスターはシックで重厚なのに、宝塚版が何故か明るい着物でコントのようなポスターなのも頷ける。
何より原作の内容と群像劇である点。
宙組公演 『神々の土地』のように、有沙瞳がトップ娘役でない以上は出番を分散する必要がある。手っ取り早く分散するなら群像劇だ。
舞台が本場の三谷幸喜が、あえて映像で作った作品をわざわざ舞台化する。無味乾燥さは拭えないが
「日本で群像劇と言えば三谷幸喜」ではある。
あの映画の核は「全部嘘?」と思えるラスト。
家族にも仲間にも本心は見せない。
誰も主人公の本質には触れられない。
総理大臣という孤高の人間。
それが無いとただのコントなので「やもめ公演」にはぴったりなのだ。
以上のことから星組で「記憶にございません!」と企画、打診されたのは納得してきた。
タイミング的には不謹慎過ぎる内容だ。
しかし三谷幸喜新作映画「スオミの話をしよう」の公開時期なので、宣伝に使われているのだろう。
「記憶にございません!」以来5年ぶりに手がけた映画監督・脚本作品としている以上、他作品に変更は駄目。
せめて喪が明けてからに延期も駄目。
宝塚歌劇団側に決定権は無かったかもしれない。