過重労働を認めたのに連続サヨナラショー、新人公演も完全復活。タカラジェンヌはもちろん、スタッフの労働環境も不安になる。
逆に週刊誌がこぞって探っただろう宙組は再開日にリーク無し、東京宝塚劇場『Le Grand Escalier -ル・グラン・エスカリエ-』も順調に始まった。
とはいえ正念場は全国ツアー『大海賊』-復讐のカリブ海-『Heat on Beat!-Evolution-』と、宝塚大劇場公演『宝塚110年の恋のうた』『Razzle Dazzle』だろう。
近年の最低売上は、明らかに星組『バレンシアの熱い花』『パッション・ダムール・アゲイン!』だ。
さすがにここまで酷いことにはならないと思うが、専科は不参加。やたら広島公演があるので瀬央ゆりあが参加するかと思いきや、雪組公演『愛の不時着』に入ったため大劇場の参加もない。凪七瑠海も花組新トップコンビ永久輝せあと星空美咲の大劇場お披露目『エンジェリックライ』『Jubilee』で2番手役のようだ。水美舞斗だと既に2番手お披露目を済んでいる桜木みなととかち合うことになる。
そう考えると次の大劇場でも、主演級専科の参加は無いかもしれない。
内容的にも当て書き過ぎてリスクが高い。しかもコメディでは、どうしたって白々しい。
リアルな現代日本設定という最悪の『記憶にございません!』展開は免れたが、現実と切り離せる圧倒的なファンタジーが欲しかった。やはり『FINAL FANTASY XVI』を取り戻せなかったのが悔やまれる。
芹香斗亜が予定通りの任期を全うするとしても、次期トップスターの準備は進めなければならない。
しかし苦労が見えているのに、宙組トップスターの責任を負ってくれる人間が他組にいるのか疑問である。組替えどころか専科も来たがらないとしたら、今いるスターをなんとか上げていくしかない。
宝塚にとって生え抜きトップは特別だ。
特に宙組は初の生え抜きトップスターを悲願としていた。
スターシステムなので個人のファンが強い。全組観るファンでも偏りはあり、長いファンほど特定の組贔屓にもなっていく。そのため組替えをすれば、人気知名度は倍で当然。
人気組から来たなら数倍でも普通。
いってみればチート、裏技である。
だからこそ配属された組だけでトップになる生え抜きは、組の真価も発揮されたといえる。
そんな特別な存在を初めて出すのが、混乱に乗じた消去法のような流れでいいのか。複雑な思いはあるだろう。
そもそも宝塚歌劇では個人が抱えるファンが、ほぼそのまま集客となる。宙組の人数が少ないままでは厳しい状況が続く。
さらに作品も不安要素が強いとなると、今の宙組で次期トップスターとしてやっていけるほどファンを増やすのも難しい。
そのためか劇団内外で95期推しが再燃している。
世間から一斉に批判を浴び、悪いイメージが固まりつつある宝塚歌劇団にとって、同期の絆は起死回生の一手だ。
プロとしてビジネスが始まる前、音楽学校の関係性は今や唯一の信頼である。ビジネスとなると早々に割り切ってしまったり遺恨を残しがちだが、学生生活というのは誰の心にも「やりきった」ゴールがある。
だから自分の学生時代と重ね「良いことも悪いこともあったからこその絆」を理解できるのだ。
減少している受験生の対策にも効果を発揮するだろう。
組だけでなく宝塚の枠も越えた専科、柚香光と月城かなとの退団と芸能界への売り出し、新トップスター朝美絢の就任。
そして他トップスターがお披露目と長期中止明けという状況で、唯一の安定したトップスターである礼真琴がJ-POPカヴァーアルバム「REACH」で桜木みなとと共演した。
J-POPが得意なイメージやスケジュールの都合もあっただろうが、少なからず礼真琴ファンの横流しを狙っているように思う。
天寿光希の司会で「長身男役が多い組で小柄ながら安定感のある器用さ」という、組での存在感も重なるメンバーが揃う。やはり客観的にはこの辺りのファン層に刺さるだろう。宝塚のシステム的に横流しには他組のが効果的に感じるので、ゲスト出演のサプライズも期待される。
不安になるのはタカラヅカ・スカイ・ステージの公開収録とはいえ、トーク&ライブを完全に過重労働なスケジュールで入れたことだ。
『1789 -バスティーユの恋人たち-』の二の舞にならなければいいが。